cpt 2016-07-04 17.46.56

「マンションの自治会です」

何年か前に深澤直人さんのインタビューに同席する機会があって、最近苦労されてることを伺ったところこんな答えが帰ってきた。大人物たる深澤さんでさえ苦労される「マンション自治会」。ずっと興味があったが、賃貸向けの集合住宅には自治会はないわけで、あこがれにも似たものがあった。

いま、僕は古めかしい分譲マンションに(賃貸で)住んでいる。設計の古さは目立つし完璧なる快適さはないけれど、古い石がたくさんつかってあったりして、気に入っている。なにより、自治会があるのだ。

さあ、その自治会、気にはなるし、エントランスの掲示板で情報は得られるのだけれど、賃貸入居者たる僕には敷居が高い。「参加・見学自由」と書いてある定例会は平日昼間なわけで参加はできない。何度かロビーでの会合を目にしたけれど高齢世帯が多いからか、牧歌的な雰囲気がただよって・・・いた。そう、過去形だ。ここ半年くらいのうちに、劇的な政変が起きたようで、理事ががらっと変わって、結果的にどうなったかといえば管理会社が交代して、暮らしの利便が大きく変わった。宅配便受け取りサービスが廃止されて、もう不便この上ない・・。

議事録と行間から察するに、管理費と積立金の運用における優先順位と守るべきものが変わったのだ。古いからできるだけ積立金にまわしたい。余計なコストはカットしたい。昼間もいる世帯のほうが多いから余計なサービスはいらない。管理コストはIT化して減らす。多数派(=高齢世帯)の合理的な選択なのであって全体としては正しかったと思う。短期的には。

その他色々の変更を見ると、どうも短期的には良さそうでも、前進してそうでも、周囲との関係性とか長期的に考えると、大きな問題のありそうなことも多い。

と、分析してみたところで賃貸入居者たる僕には参政権すらなかったので受け入れるしかないのだけれど。

原則やルールが変わってしまうことの不利益を想像することは難しい。そもそも人間は不幸の想像能力がそんなに鍛え上げられていない。美味しいものの味を想像するのは楽しいしけっこうできる訳だけど、不味いものの味は想像しづらい。ケガの痛みなんかもそうだ。この半世紀ほどはルールが変わったことで不利益を被った経験のない人のほうが多いのだから、それはなんとも危ない。

もし僕が分譲の物件を所有してたらきっと自治会にもなんとか参加して、短期的な利益への偏向について議論を向けていたはずだ。引っ越すまで多少の不便は我慢する他ないのだ。